管理者研修 実践事例
金融業U社実践事例
金融業U社では、指示・命令のマネジメントから部下の意欲と能力を引き出す組織風土へ変革を図ることが求められていた。
管理者研修を実施するにあたって、新任管理者にマネジメント全般を体系的に理解させること、部下の指導育成の全体像を理解させること、指示・命令のマネジメントから部下の意欲と能力を引き出す組織風土へ変革を図ることを要請された。
1.ニーズ調査の方法と結果
ニーズ調査は、
@面談によりご担当者の要望を収集する、
A新任管理者に「困っていること、学びたいこと」のアンケートを行った。
ニーズ調査の結果、以下のような課題があることがわかった。
- 指示・命令中心のマネジメントが組織全体の風土になっている。
- 若い職員が先輩・上司からの叱咤激励をパワーハラスメントのように感じてしまったり、先輩や上司がそのような若い職員を理解しようとせずに能力がないと決めつけてしまったりして、お互いの関係がぎくしゃくしている面がある。
- 部下の指導育成において、上司自身が経験の中で身につけてきた自分なりの方法に頼っていて、効果的ではない場合がある。また、部下指導に関して「コーチング」を学んだが、やり方や方法論に終始していて、部下の指導育成の大切なことがわかっていない面がある。
- 職場での現状は、お客様に流されたり、手間を掛けすぎたりして、時間を効率的に使えていない。
そこで、マネジメントの基本、タイムマネジメント、リーダーシップ理論、TA(自我状態、ストローク)、積極的な聴き方を中心に、プランを企画設計した。
2.管理者研修の目的
- マネジメントの全体像を理解する。管理者として必要な知識、能力を理解し、管理者になるための能力開発を自主的に行うようになる。
- 仕事の効率化を図るために必要な時間管理の視点をつかみ、仕事を効果的、効率的に進める手がかりをつかむ。
- 部署内の問題を、当事者意識をもって解決が図れるようになる。
- 部下との信頼関係を築き、効果的に指導育成を行うために必要なコミュニケーションスキルを身につける。
- 部下のやる気を高め、部下が目標に向かって自ら動くリーダーシップを身につける。
- 部下への効果的な叱り方を身につける。
-
上司からの命令を部下に指示・伝達するのではなく、部下の気持ちや意見を引き出し、チームとして協力し合うことができるようになる。
3.管理者研修の計画、および実施
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- 管理者の役割、マネジメントの基本を理解する。
- タイムマネジメントを効果的に行えるようになる。
職場実践(3ヶ月)
- タイムマネジメント練習帳の実践
- 上司への報告と上司からの支援(コーチング)
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- 部下との信頼関係を築くコミュニケーションスキルの向上
- 効果的な部下の指導育成が行えるようになる。
- 部下の目標達成や問題解決を援助するコーチングを習得する。
職場実践(3ヶ月)
- 職場実践目標の実践
- 講師からの支援(コーチング)
- 部下へのコーチングの実践(数回実施)
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マネジメント研修 第一回 −マネジメントの基本 タイムマネジメント−
<ねらい>
- マネジメントの全体像を理解する。管理者として必要な知識、能力を理解し、管理者になるための能力開発を自主的に行うようになる。
- 部署内の問題を、当事者意識をもって解決が図れるようになる。
- 仕事の効率化を図るために必要な時間管理の視点をつかみ、仕事を効果的、効率的に進める手がかりをつかむ。
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1日目 |
9 |
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10 |
- 管理職とは 管理職の役割
- 管理の階層によるマネジメントの違い
- 管理者に必要な能力
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11 |
- 事例研究
- 話し合い(何が問題か、解決策は)
- 発表とまとめ
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12 |
昼 食 |
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グループ討議(理想の上司とは)
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- 時間管理の基礎知識
- 自分の時間管理力をチェックする
- 時間管理の基本行動
- タイムマネジメント練習帳の書き方
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16 |
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- 感想の発表
- 職場実践目標の設定(タイムマネジメント練習帳に含める)
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マネジメント研修 第二回 −部下指導育成能力−
<ねらい>
- 自己理解を深めると共に、より効果的にリーダーシップを発揮するための手がかりをつかみます。
- 部下のやる気を高め、職場の活性化を図るために必要なコミュニケーションの基本を身につけます。
- 部下との信頼関係を築き、部下の自由な意見や気持ちを引き出す聴き方を身につけます。
- 部下の問題解決や目標達成を援助するコーチングスキルを身につけます。
- 部下に行動を変えてほしい時、部下自身が自ら進んで行動を変える叱り方を身につけます。
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1日目 |
2日目 |
9 |
8:40 スタート
- 研修のねらいと心構え
- 学びたいこと
- 職場実践目標の振り返り
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8:40 スタート
- 意思疎通の障害と通路
- 積極的な聴き方(実習)
- 上司からの命令を部下にいかに伝えるか
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10 |
【リーダーシップ発揮のための
自己理解と行動変革】 |
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- 自分を知り、相手を知る
- 私の中の三つの人格
- 自分が与えているプラス要因とマイナス要因
- リーダシップを効果的に発揮する手がかり
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11 |
昼 食 |
12 |
昼 食 |
- コーチングとは
- 部下が問題を抱えるときの援助の仕方(実習)
- コーチングの進め方
- コーチング演習
- コーチングの効用
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13 |
- 部下の指導育成に大切なこと
- 心の栄養 ストローク
- 部下の動機づけと職場の活性化
- 肯定的なストロークの交換
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14 |
【部下への効果的な叱り方】講義と演習
- 変えてほしい相手の行動
- ロールプレイング
- 建設的な叱り方
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15 |
- 部下のやる気を高めるには(グループ討議)
- 環境要因と動機づけ要因
- 目標の示し方(X理論、Y理論による人間観)
- 部下の成熟度に応じた指導
(状況対応型リーダーシップ)
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【研修総括】
・職場実践目標の設定 |
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4.管理者研修の振り返り
新任管理者がマネジメント全般を体系的に理解し、自主的に自己啓発を図れるように基本を身につけることができました。
そして、課題となっていたタイムマネジメントは研修と職場実践を通して、仕事の効率的な進め方が身につきました。
また、部下の指導育成については、体験学習を通して、深く学び身につけることができ、指導育成の原理原則をつかめました。
指示・命令のマネジメントから部下の意欲と能力を引き出す組織風土へ変革を図るきっかけにはなりましたが、実現のためには組織全体の継続的な研修と実践が必要で、次の課題となりました。
5.参加者による人材育成の評価
今回の研修に対する参加者の評価は以下の通りです。参加者24名。
〈評価〉
@マネジメント研修 第一回(マネジメントの基本、タイムマネジメント)
非常に有意義だった 14名 有意義だった 10名
どちらともいえない 0名 あまり参考にならなかった 0名
Aマネジメント研修 第二回(部下の指導育成)
非常に有意義だった 18名 有意義だった 6名
どちらともいえない 0名 あまり参考にならなかった 0名
<参加者のご感想>
- 時間の効率的活用方法で、まだまだ自分自身の活動にも無駄があるのが浮き彫りになった。
- 時間管理、部下育成ともに重要な課題と考えていたので、非常に有意義な研修であったと思っています。
- 部下とのコミュニケーション、聴く力の方法、アプローチの仕方は、十分理解でき、ぜひ実践していこうと思った。
- 実践研修を通じ、学ぶことができ、非常に良かった。話を聴くことの大切さも同時に学べた。
- 具体的に相談や質問を部下から受けたときに何に気をつければよいのか。また、普段どのように接したらよいのかわかった。
- 部下を持つ立場として、改めて部下の意見を聴くことの大切さや彼らの行動を見ることが必要だと考え直したこと。
- 非常にわかりやすく、内容も実務に近いものであったのがよかった。
- 理想の上司、部下のやる気の高め方、効率的な叱り方を学ぶことができ、漠然としていたことが身につけられると思いました。
- 特に部下への指導の仕方、叱り方、また上司からの命令といかに部下に伝えるか大変わかりやすかった。
- ロールプレイに基づき他人の意見や自分の不足していることを気づかされたことは、とても良かったと思う。
- 自分が課題としていることが研修のねらいとしてあり、プログラムに組み込まれていた。そして、自分自身、役に立ち参考になることが多かったので良かった。
- グループで考えていく進行の仕方は良いものだと思います。メンバーの新鮮な意見や考え方が吸収できるからです。
- 研修方法が斬新的で最後まで興味を持つことができた。
- 途中途中でグループ討論やロールプレイングがあり眠くなることがなく、最後まで興味を持って研修を受けることができた。
- 教材は意見をまとめることができ使用しやすかったと思います。抽象的ではなく具体的な事例をもとに生の声が聞けて大変参考になりました。
以上